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これは半ば書評であり感想文でもある。
井沢元彦著「攘夷と護憲」を再読した。
これは幕末の攘夷運動と現代の護憲運動を並べて比較した軽い読物である。

攘夷運動とは一部の確信犯達にとって倒幕運動の隠れ蓑、悪く言えば嫌がらせであった。
対して護憲運動はどうか。
55年体制下においては護憲運動は社会思想の主流であった。
与党自民党は改憲を党是としながらも、改憲に必要な2/3の議席を取れずいつしか政権維持に汲々としてきた。
一方の野党社会党は改憲阻止に満足し政権交代など考えもしなかった。
冷戦構造の崩壊が日本のコップの中の抗争を突き崩す事になる。
つまり55年体制=徳川”鎖国”体制と言える。

さて此処までは良いとして、現在護憲派は大きく交代した。
いま改憲の最大の障害は連立与党の一翼を担う公明党かも知れない。
野党民主党はと言えば、旧社会党系の護憲派が一部紛れ込んではいるモノの、彼らの護憲は幕末の倒幕派のそれと同じである。
明治新政府は徳川家を排除する事で社会の一新を図ったように見えるが、実のところ庶民の生活は劇的に変わった訳ではない。
民主党の唱える「政権交代」も庶民生活にはさほど寄与しないだろう。
しかしながら「御一新」に全く意味がなかったかと言えばそうでもない。
幕府を始め諸藩は借金を抱え政府機能が麻痺寸前であった。明治新政府の登場はそうした経済的な行き詰まりを一気に打開する効果があった。
最も恩恵を受けたのは他ならぬ薩摩藩であろう。薩摩はそれまでの借金を250年払い(しかも利息無し)と言う滅茶苦茶な条件で財政の建て直しを図っていたが、ハンの消滅によりこの借金も帳消しとなったのである。

今は政権交代が必要なほど社会的に行き詰っていない。
困っているのは(政権交代が実現しないと崩壊してしまう)民主党である。

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